相談の概要
本件は、訪問介護の監査対応です。監査が入ったあとに相談がありました。
行政庁に疑われている違反事由は以下のとおりでした。
- ① 更新申請時に、退職済みで稼働予定のない職員を勤務体制一覧表に記入して提出した。(※ただし、当該職員が稼働しなくとも、更新要件を満たしていた。)
- ② 管理者が常駐していなかった。
- ③ 他の事業所との兼務職員がいるなど、正確に計算すると、常勤換算2.5人を下回っている月があった。
- ④ 特定事業所加算の要件を欠いたまま請求していた。
違反事由が多く、行政担当者の態度も非常に厳しい状況で、最悪、指定取消処分になるのではないか、何とか事業継続できないかという相談でした。
解決結果
最終的には、人員基準を順守する対策を講じることを求める勧告と一部の報酬の自主返還が指示されたものの、行政処分は受けませんでした。
問題解決のためにサポートした内容
本件では、違反事由は、事実関係としては争い難く、認めるべき内容は認め、ただ、意図的ではなく、やむを得ない事情もあったのだと説明するという方針を採用することになりました。
ご依頼をいただいてすぐに、行政庁が事業所に聞き取り調査に来るということだったので、調査に立ち合いをしました。この調査では、それまで回答していた事実関係の確認と資料の確認がされ、追加の資料の提出が命じられただけでしたが、行政庁が資料の内容に疑義を持っている様子が感じ取れたので、弁護士からは、「認めるべき点は認めるし、資料も偽造等せずにそのまま提出する。今後も調査には誠実に協力する。」などと説明し、虚偽報告や資料の偽造に対する疑義を払拭するよう務めました。
その後も、事業者が役所に呼ばれる際に同行し、行政庁からの聞き取りの内容を整理し、適切に回答できるよう事業者を支援しました。また、法的な解釈や制度が問題になる場合は、弁護士としての意見を述べ、事業者の処分が軽減がされるよう尽力しました。
最終的には、事業者としての意見を、行政庁に説明しました。
虚偽申請については、急な退職があったこと、実態としては虚偽の申請をしなくとも更新要件を満たしていたことを説明しました。
人員基準違反については、現場に任せきりになっており管理ができていなかったこと、人員基準は満たしていると認識していたことなどを説明しました。
さらに、人員基準を欠いている月があるものの、サービス提供自体には問題がなく、苦情も発生していないため、利用者に被害はないという点を説明しました。
担当弁護士からのコメント
弁護士米澤 晃本件では、違反事由が多く、また、虚偽報告・資料の偽造が疑われていると感じられる件でした。
虚偽報告・資料の偽造は、それ自体、行政処分事由として定められているもので、なおかつ、これらの行為があると、行政庁の態度は、行政処分を実施する方向に大きく傾きます。
この点で、本件では、弁護士が介入し、「虚偽報告・資料の偽造はしない。」と説明でき、行政庁から信頼を得られたことが、行政処分がされなかった大きな理由になっているのではないかと感じます。
人間誰しも疚しいことを隠そうとしてしまう傾向にあります。ただ、監査の場面で虚偽の報告をしてしまうと、取り返しのつかない事態になるかもしれません。回答に窮することがあれば、「追って回答する」や「弁護士に相談してから回答する」などして、すぐにご相談ください。
もちろん、虚偽報告をしてしまったとしても、必ず行政処分がされるわけではありません。ただ、そのような場合早急な対応が必要になりますので、すぐに弁護士法人かなめにご相談ください。



















