相談の概要

本件では、居宅介護支援事業所の運営指導において、一部の利用者についてアセスメントシートがないことが指摘され、5年間の全利用者について自主点検をし、返還すべき報酬があれば自主返還するように指導されました。

仮に、アセスメントシートがない利用者について、実際にアセスメントを実施していないという認定がされれば、運営基準減算として、約1500万円の返還をしなければいけない状況です。大規模な事業者ではなかったので、1500万円もの報酬を返還できる財務状況ではなく、事業所の閉鎖も検討せざるを得ない状況でした。

担当のケアマネさんに確認したところ、アセスメント自体は全利用者に実施しており、ただ、一部の利用者について、アセスメント時のメモをアセスメントシートに転記するのを失念していたということでした。また、モニタリングについても当然実施をしているということでした。

 

解決結果

最終的には、行政から報酬の返還は不要との回答があり、報酬返還をせずに解決しました。

 

問題解決のためにサポートした内容

まずは、直近1年間について、全利用者のアセスメント、サービス担当者会議、ケアプラン、モニタリングの実施状況について精査しました。

精査の結果、運営指導時に指摘を受けたアセスメントシートがないこと以外は、特段問題はありませんでした。

アセスメントについては、モニタリングと異なり、運営基準上、その内容を記録することまでは義務付けられていません。つまり、アセスメントシートがなかったとしても、アセスメントを実施していたのであれば、指定基準違反ではありませんし、当然運営基準減算の対象ではありません。

また、どのケアマネさんも、アセスメントとモニタリングが共に必要であることは認識しながらも、実際の面談時には明確に区別することなく、利用者と面談をし、利用者の状況を確認しているはずです。そのため、モニタリングの記録があることは、その際に、アセスメントを実施していることの裏付けになります。

そこで、行政に対し、アセスメントの記録義務がないことを指摘した上で、アセスメントを実施していた根拠として、アセスメントシートを作成の上、全利用者の1年分の確認用記録を作成し、行政に持参し、さらに他に運営基準減算に該当する事由はないことから、「自主点検の結果、返還すべき報酬はありませんでした。」と回答しました。

なお、本件では、アセスメントは必要な当時に実施しており、あくまでアセスメントシートを作成していなかった事案でしたので、行政からの指摘当時には、アセスメントシートを作成していなかったことは認めた上で事後的にアセスメントシートを作成したものです。そのため、実際にアセスメントを実施していないにもかかわらず、事後的にアセスメントシートを作成すればいいということではありませんので、ご注意ください。

 

担当弁護士からのコメント

「弁護士 米澤 晃」からのコメント弁護士米澤 晃

行政から報酬返還を示唆・指導されたとしても、必ず報酬を返還しなければならないわけではありません。報酬返還を示唆・指導されたとしても、決して諦めないでください。

弁護士法人かなめでは、報酬の返還を争う案件を多数手がけています。多額の報酬の返還を示唆・指導された場合は、ぜひ弁護士法人かなめにご相談ください。

 

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