相談の概要
本件は、通所介護事業所の監査対応です。相談を受けた時点で、全部効力停止処分を予告する弁明通知書を受け取っていました。
弁明通知書に記載された主な違反事由は以下のとおりで、多岐にわたりました。
- 看護師が配置されていない日があるにもかかわらず、人員欠如減算を算定していない。
- 人員欠如減算に該当する場合には取得できない加算を取得している。
- 虚偽報告、虚偽答弁があった。
事業者としては、全部効力停止処分を受けてしまうと、その期間の運営資金を捻出することができないため、廃業するしかないと考えていましたが、処分の内容には納得できないので、弁護士に依頼したということでした。
解決結果
行政処分の撤回を求めましたが、結果的には、全部効力停止処分が一部効力停止処分に軽減されました。
問題解決のためにサポートした内容
本件では、事業者の認識のヒアリングを踏まえて、弁明通知書の内容を検討し、事実認定、法解釈に問題がある点を指摘しました。
例えば、本件では、処分理由として、虚偽報告、虚偽答弁が掲げられているものの、事業者としては、虚偽報告、虚偽答弁をした認識はなかったですし、当然そのような意図もありませんでした。むしろ、行政庁の担当者の態度が極めて高圧的であり、困惑して適切な受け答えができず、事業者の言い分も全く聞き入れてもらえなかったということでした。そこで、監査手続が違法であることや虚偽報告、虚偽答弁ではないことを主張しました。
また、行政庁が、加算要件を満たさないと指摘しているものの中には、行政庁が加算要件の解釈を誤っており、加算要件を満たしていたものもありました。そこで、このような加算については、加算要件を満たしていると主張しました。
このほか、多角的な観点から問題点を指摘したため、この弁明手続で、弁護士が行政庁に提出した書面は、合計でA4サイズ50ページを超えました。
担当弁護士からのコメント
弁護士米澤 晃通常、弁明手続や聴聞では、行政庁としても、事業者から適切な反論が出てくることを想定していません。そのため、弁明手続や聴聞は、儀式的に行われるもので、事業者からの反論を踏まえて行政処分の内容を検討するという意味での本来的な弁明手続や聴聞が実施されることはほとんどありません。
もっとも、我々の経験上、行政庁の調査、調査に基づく事実認定、これを基にした行政処分決定プロセスについて、全く問題がないケースは皆無です。
弁明手続や聴聞になったとしても、決して諦めることなく、最後まで戦うべきだと考えます。
本件では、行政処分の内容に疑義があり、行政処分を取り消すことを求める裁判をすることも十分検討できましたが、事業者は様々な事情で裁判を断念されました。
弁明手続や聴聞は、あくまでも行政庁内部での手続ですので、客観的に行政処分の内容に問題があったとしても、行政庁が決断すれば、これらの手続を終結し、行政処分をすることができてしまいます。
そのような場合には、事業者側には、行政訴訟を提起するなどして、事後的に争うしかありませんが、不当な行政処分を減らしていくためには、疑義のある行政処分については積極的に争っていくほかないと考えています。
また、弁明手続や聴聞は、非常にタイトなスケジュールで行われることが多く、1秒でも早く着手する必要があります。弁明通知書や聴聞通知書が届いた場合は、すぐに弁護士法人かなめにお問い合わせください。できるだけ速やかに対応いたします。



















